老舗和菓子店「両口屋是清」に聞く、五感で味わう和菓子の世界

和菓子は、「美しさ」だけではない。

見る、味わう、触れる、香る、そして時には聞く——五感で感じる世界が広がっている。

とはいえ、肩肘張る必要はない。ただ、あなたが惹かれた和菓子を味わえばいい。

「当店の特徴は多様なお菓子をご用意し、用途に合わせて選ぶことができます。もうひとつと手が伸びてしまうような小ぶりサイズのお菓子も、ぜひお試しください。」

そう言って、小さな一皿の和菓子を差し出してくれたのは、名古屋発祥の老舗和菓子店「両口屋是清(りょうぐちやこれきよ)」である。

創業は1634年。390年以上の歴史を重ねながら、名古屋を中心に店舗を展開し、全国各地の百貨店でも販売を行っている。

そんな両口屋是清へ、和菓子づくりの真髄にある想いと、これからの和菓子のあり方について話を聞いた。

目次

名古屋から甘味文化を伝える「両口屋是清」の歩み

「寛永11年(1634年)に名古屋の地で和菓子屋として創業しました。」

餡を菓子に使用する(包餡する)和菓子屋として発展した両口屋是清。1671年には尾張藩の御菓子御用を担うようになった。

「お殿様の御用菓子製造していた過去から伝わる、ご要望にお応えするというスタイルは、今もなお受け継がれています。いつの時代もお客様のご要望にお応えする姿勢を大切にしてきました。」

尾張徳川家の武将もきっと茶の席で頬が落ちるほど味わったであろう両口屋是清の上生菓子。長い年月を越えて今もなお名古屋の地で愛されている。名古屋のみならず、東京や京都のお茶の席など、信頼と人気は東西各地へも広がる。

390年以上にわたり愛されてきた両口屋是清ー

愛され続ける理由は、伝統を守るだけではない。

「時代とともに好まれる美味しさは変わります。時代に合わせて求められる御菓子の種類、味、素材などは柔軟に見直し、常に美味しさを追求し続けてきました。」

老舗でありながらも、変化を恐れない。その歩みの姿勢こそが、愛され続ける理由だろう。

五感で味わう「両口屋是清」の季節の生菓子

「生菓子は、季節を表現することを大切にしています。職人が作りだす「両口屋是清」ならではの味・形・色などが当店の特徴です。」

桜餅といえば春。

水羊羹といえば夏。

栗きんとんといえばー

こんな風に生菓子と季節の結びつきは、私たちの感覚に深く根づいている。

両口屋是清の上生菓子は、そうした季節感をさらに一歩押し広げる。

上生菓子は、食べるアートとも言われるように芸術的な表現に特徴があるが、表現するものは季節の花鳥風月だけではない。ときには、詩や俳句から連想される四季を上生菓子で表現する柔軟さも持ち合わせる。

毎月、店頭に並ぶ10種類の生菓子には、両口屋是清ならではの伝統と、遊び心が同居している。

両口屋是清の魅力は、見た目の美しさだけには留まらない。

話を伺うなかで、何度も語られたのが「五感」という言葉だった。

視覚だけでなく、菓銘(菓子の商品名)から広がる情景、手に取ったときの質感、口に入れてほろっと溶けゆく余韻ー

「季節を感じられるような菓銘を付けることで、菓銘から情景を想像し、楽しめるような命名をしています。」

たとえば、2025年の夏に登場した「水夏」。読み方は「すいか」。

スイカの断面を思わせる緑色と赤色のパッケージとともに、2文字の言葉が季節を涼しげに表現していた。

「ひとつひとつ丁寧に商品に合わせ、パッケージにも季節感をプラスしています。お菓子・パッケージともに五感を意識して製造・販売しています。」

思わず手に取ってしまうのは、味や見た目の美しさだけでなく、こうした感覚の重なりが大きいからだろう。

名古屋の老舗和菓子店として。「両口屋是清」のこれから

名古屋の茶文化とともに歩んできた両口屋是清。

「名古屋は尾張藩の影響もあり、お茶の文化が盛んです。お茶の時間に寄り添う存在として、和菓子を楽しんでいただきたいです。」

和菓子の老舗はこれからどんなあり方を目指すのかー、その想いを伺った。

「脈々と受け継がれてきた、四季や日本文化を伝えるお菓子の役割は、次の世代に残すべきものと考えています。職人の技術や味を守るだけでなく、変化を取り入れていく姿勢も大切に守りながら、和菓子を作り続けていきます。」

新ブランド「和菓子 結」や、和カフェ「那古野茶屋」の展開にも表れているように、挑戦は続く。
五感に訴える和菓子で、私たちを魅了する両口屋是清。これからも新しい美味しさを更新していくことだろう。

株式会社 両口屋是清
代表取締役 篠田 尚久
1979年株式会社両口屋是清に入社後、2005年代表取締役社長就任。両口屋是清は1634年創業。尾張藩御菓子御用をつとめ、第二代藩主光友公の御意を得て「御菓子処両口屋是清」の表看板をいただいた歴史がある。その意志を継承すべく国際博覧会である愛知万博では記念のお菓子を作成する等新しい和菓子の製造、東京等へのカフェや店舗出店を通し、和菓子の新しい文化形成に貢献している。

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