尾張徳川家が築いたお城として知られる名古屋城。天守閣の上に載る金シャチがトレードマークで、その豪華絢爛な見た目は多くの観光客の来城目的にもなっています。そんな名古屋城のシンボルは金シャチだけではありません。
名古屋城には鹿が生息しており、この鹿も名古屋城のトレードマークとして愛され続けています。通り掛かった観光客から「こんなところに鹿がいる」と驚かれながら、長年見守られています。
お城の観光時には、生息するに至った背景、名付けられた経緯、今後の展望を知るとより関心を持って鑑賞できるでしょう。そこでこの記事では、名古屋城に住む鹿の由来や名前の由来、鑑賞時の注意点などをお伝えします。
名古屋城で飼育されている鹿の種別は「ホンシュウジカ」

名古屋城に生息している2頭の鹿は、いずれもホンシュウジカです。
ホンシュウジカは、ニホンジカの中でも本州の中に住む種別を指します。草食性で、主な食料は木の葉や芽、草などです。その他にはシイタケやマツタケ、ドングリや木の皮を食べます。
九州に住むニホンジカはキュウシュウジカ、北海道に住むニホンジカはエゾジカと呼ばれており、ホンシュウジカはこれらと同じ「ニホンジカ」に分類される鹿種です。
ホンシュウジカは、鹿と触れ合えることで有名な奈良県の奈良公園・広島県の宮島に生息するシカと同じ鹿種です。旅行で鹿と触れ合った経験のある方にとっては馴染みのある存在といえるでしょう。
名古屋城で、ホンシュウジカが生息するようになったのは、江戸時代にまで遡ります。名古屋城の記録をまとめた「金城温古録」によると、草刈りをしていた者が東堀で石を投げたところ、鹿に追い立てられた」とする内容が確認されています。
その後、戦時中の一度は鹿がいなくなる時期もありながらも、戦後に東山動物園から鹿を譲り受け、1977年には生息数は50頭を超える状況にもなりました。
しかし、そこから野犬の被害・病気にかかる個体が増えたことから鹿の生息数は減少。その後に、3頭を和歌山県和歌山城内の動物園から譲り受け、その子孫となる2頭が、今も名古屋城で暮らしています。
2026年2月時点で名古屋城にいる鹿は「やまむらちゃん」と「もみじちゃん」の2匹

名古屋城に住む2頭のホンシュウジカの性別はメスで、それぞれ名前がついています。
2匹は、名古屋城の職員から「やまむら」ちゃん・「もみじ」ちゃんと名付けられています。
背中に模様がある方が子供の「やまむら」ちゃん、模様がない方が「もみじ」ちゃんです。2匹ともに高齢ながら仲良く暮らしている様子で、観光客の心を癒しています。
2匹の名前の由来は、俳優の「山村紅葉」さんです。山村さんは東宝芸能株式会社に所属している女性俳優で、NHK連続ドラマ小説「べっぴんさん」や大河ドラマ「べらぼう」などの出演実績があります。
命名されたきっかけは、「もみじ」ちゃんの脚のケガでした。
当時は名前が付けられておらず、呼びかけるための名前を付けたいと職員が考えたことから「もみじ」ちゃんが命名されました。その後、子の「やまむら」ちゃんの名前もつけられて、名前とともに名古屋城で親しまれています。
「やまむらちゃん」と「もみじちゃん」は内堀(西南隅櫓側)に生息している

「やまむら」ちゃんと「もみじ」ちゃんが生息しているのは、名古屋城の内堀・西南隅櫓側です。
名古屋城の西南隅櫓は「名古屋城本丸」の近くにあり、名古屋正門を後ろにすると前方左側にあります。東門から向かう場合は「二之丸広場」方面へ向かい、その先を通過。「麺類食堂」のある踊り場まで達すると、右前方にあります。
詳細な館内マップは「名古屋城案内マップ」から確認しましょう。
名古屋城では他県からの鹿の受け入れを検討中

名古屋城に住む2頭はともに高齢(15歳〜17歳)でかつメスなため繁殖が難しい状況です。数年後には、鹿の平均寿命にも達する状況から、名古屋城で鹿が見られなくなる事態が懸念されています。
名古屋城で鹿がみられなくなる状況を受けて、名古屋市では、和歌山県西牟婁郡白浜町のアドベンチャーワールドから鹿を受け入れる提案をしたり、京都・深泥池・宝ケ池の区域に住んでいる野生の鹿を受け入れたりするプランを検討しています。
その一方、アドベンチャーワールドの鹿は去勢手術を受けており、京都・宝ヶ池地域の鹿は捕獲する専門業者との調整がつかず、受け入れが難航している模様です。
こうした現状をふまえると、名古屋城にいる鹿を1日でも長く見るためには、やまむらちゃんともみじちゃんの温かく見守り、大切に関わっていくことが求められているといえます。
名古屋城の鹿(もみじちゃんとやまむらちゃん)鑑賞時の注意点

名古屋城にいるもみじちゃんとやまむらちゃんの2頭は高齢・メスの個体です。鹿は元来臆病で警戒心の強い特徴があることもふまえて、より配慮のある関わり方をすることが大切です。
以下では、名古屋城でやまむらちゃんともみじちゃんの鑑賞する時の注意点をまとめました。
2頭が健康に過ごすためにも、注意点を守りながら鑑賞しましょう。
えさを与えない
鹿にとって、人が食べる食べ物は有害な可能性があります。菓子パンやお菓子など、砂糖が入ったものや香辛料が入ったものは、鹿の胃腸障害や虫歯の原因になりえるためです。
人の食べものを餌として与えてしまうと、これまで食べていなかったものも餌と認識するようになり、ごみを餌と認識するようになってしまいます。
やまむらちゃんともみじちゃんの主食は、内堀の草です。職員がペレットを与えたり、栄養のバランスを考慮したりして、健康状態を維持しています。
個人の判断による餌やりは2頭の栄養バランスを乱しかねません。職員からの許可がない餌やりは必ず控えましょう。
大声を出さない・ものを投げつけない
大声をあげたり、ものを投げつける行為は鹿にストレスを与え、健康面の悪影響を及ぼします。
科研費の研究によると、人為的撹乱の大きい地域に生息するニホンジカは、ストレスホルモン(コルチゾール)の濃度が高いことが示されました。
これは、人の騒音や活動が、鹿に慢性的なストレスを与えうることを示しています。大声も同様に、鹿に対してストレスを与える一因になることが推測できます。
コルチゾールの分泌が過剰になることにより、鹿の免疫力の低下や体力の低下を招きかねません。名古屋城に住む2頭の安全や安心を守るためにも、静かな関わり方を心がけましょう。
※出典:科学研究費助成事業「人為的撹乱が野生動物に及ぼす影響の総合評価」
参照日2026年2月26日
ごみを投げ入れない・落とし物に注意する
ごみの誤食は、鹿の健康や生命に危険を及ぼします。
反芻動物である鹿は、胃の中の微生物の力を借りて、植物を消化・発酵させる動物で、これによりタンパク質やエネルギーを得ています。
一方、ごみや自然界にはない食べものを食べてしまうと、体内の微生物が作用せず、食べものを消化できなくなってしまいます。もちろん、栄養面・それに伴う健康面での問題が発生しかねません。
プラスチックごみを食べた鹿はそれを胃の中で消化できません。鹿の胃の中にプラスチックごみが残り続けると、消化や健康に悪影響を与えかねず、命を落とす危険にもつながります。
ものを投げつける行為は鹿の警戒心を高め、ストレスを与える原因にもなります。ポイ捨てはもちろん、落とし物にも注意し、鹿のごみの誤食を防ぎましょう。
鑑賞後の休憩は付近の金シャチ横丁がおすすめ

やまむらちゃんともみじちゃんが穏やかに暮らす名古屋城。鑑賞を終え、一息つく際は付近にある「金シャチ横丁」がおすすめです。
名古屋グルメを提供するカフェ・ランチ・ディナーのお店が多数あり、観光の疲れを癒しつつ、ここだけの美味しいご飯やフードを楽しめます。
金シャチグッズをはじめとしたお土産、守口漬や豊富な海鮮を使用したせんべいなど、名古屋の特産品もあるため、お買い物にも便利です。
マナーを守ってやまむらちゃんともみじちゃんを鑑賞し、仲良く過ごすその姿に癒されましょう。

