味噌煮込うどんの名店「山本屋総本家」|100年変わらない名古屋の味と伝統のこだわり

大正14年創業ー山本屋総本家の歴史は2025年に100周年を迎えた。

山本屋総本家は、味噌煮込うどんの名店として、金シャチ横丁や名鉄百貨店など名古屋市内に5店舗を構える。

グツグツと煮込んだ土鍋の蓋を開ければ、八丁味噌の香りとともに湯気が立ち上がる。味噌の香りも、鍋の蓋を取り皿にする独特の食べ方も創業当時のままだ。

山本屋総本家代表取締役社長の町田氏に、100年続く名古屋の味と、創業当時から受け継がれるこだわりについて話を伺った。

目次

100年続く老舗「山本屋総本家」が受け継いできた味と想い

大正14年(1925年)に創業してから100年の月日を経て、煮込うどんは、家庭料理からお店で食べる料理へと変わった。その歴史に寄り添った山本屋総本家は、昔ながらの名古屋の味を提供し続け、老舗として名を轟かせるようになる。

町田氏は幼い頃から自然と「山本屋総本家」の味に慣れ親しみ、先代にあたる両親から事業を継承し社長に就任した。受け継いだものは、社長という立場だけではない。山本屋総本家が存在する意義、そして、創業当時の味を守りたいという想いも、目には見えない形で受け継いだ。

「100年を迎えて、これまで同じ味で100年存続し続けてこれたことが、すごいことであったと重みを感じました。それと同時に、これからの100年も同じように在り続けることにプレッシャーも覚えます。山本屋総本家の煮込うどんを、名古屋名物として、これからも残していくことが私の使命だと思っています。」

社長を引き継いで山本屋総本家を先導した期間は、ここまでの歴史の10分の1にも満たない。その間に、昔の味を守り続けるための改良を幾度も重ねたという。

同じ味を守るために改良を重ねるー

使う素材を変えずに、同じ行程で麺を打てば、それで同じ味が作れると思っていたが、そうではなかった。

「年によって小麦や味噌の出来は変わります。昔の味を守るために、毎年配合やブレンドする素材を調整するんですよ。気候の変動が大きい分、味の調整も段々と難しくなってきています。」

なるほど。話を聞けば、これからも改良は幾度もやってくるだろうと想像ができた。答え合わせができない中で、味を守り続けることは簡単なことではない。守るものは、麺の味、味噌の味、出汁の味と多岐に渡る。どれか一つも変わってはいけない、総本家ならではの煮込うどんは、こうして守り継がれている。

山本屋総本家「味噌煮込うどん」の麺に宿る五つのこだわり

名古屋名物「味噌煮込うどん」は、見た目は鍋焼きうどんに似ているが、作り方や麺の特徴はまったく異なる。鍋焼きうどんは茹でた麺を使うが、煮込うどんは生の麺を味噌の中に入れて炊く(煮込む)。この行程の違いから、煮込うどんの麺には塩を加えず、小麦粉と水だけで作られる。

山本屋総本家の麺は、土鍋で煮込んでも独特の「こし」があることで広く知られている。代々受け継がれてきた麺の味について、固さ・太さ・生もの・打粉・素材と、五つの視点で町田氏はこだわりを追求していた。

創業当時から受け継がれる「こし」を、町田氏は「固さ」とも表現する。

「職人が麺を打っても、手の温度が変わると麺が柔らかくなったり、固くなりすぎてしまったり、手打ち麺ならではの難しさがありました。製麺に機械を導入することで、調整が難しい温度を克服し、創業当時の固さを守っています。」

と、機械化に至った経緯を教えてくれた。

「太さ」は、小麦粉の味が感じられるように、味噌の味が麺に乗るように、今の太さが必要だという。太くて固いため「啜る」ではなくて「噛む」というイメージが近いそう。

「生もの」は、生きたうどんを提供すること。つまり、朝に製麺したものだけを提供する。職人の協力もあり「生もの」のこだわりは実現した。

「出来たての麺を食べていただきたいという想いで、低温での保管には頼らず、毎朝作るようにしました。繁忙期は大変ですが、職人さんも朝早く出てくださり、麺を作ってくれています。麺がベストの状態でお客様に提供することを信念にしています。」

「打粉」には、そば粉を使う。

「そば粉を使うことによって、味噌にとろみが出て、甘みをさらに感じられます。これは初代が始めてから今まで、同じように続けています。」

そばアレルギーの方が食べれないことを悔やみながらも、やはり譲れないこだわりだという。

「素材」は、先に紹介した通り、ときに素材を選び直し、ときには配合のバランスを調整し、改良を重ねる。

「毎年、麦の出来を聞いては、粉屋さんや職人さんを集めて、いろんな配合を試しながら調整しています。何回も試食を繰り返すので、その時は体重が増えます。」

と笑いながら語るが、同時に昔からの味を追求する真摯さも伝わる。

どのこだわりも、創業当時の味を守りたいという想いから、変えずに守り続け、時には手を加えながら今まで守り抜いてきた。

100年続く美味しさの決め手は八丁味噌

味の決め手になる味噌も、小麦粉と同じように、いくつかの素材をブレンドして作っている。味の土台となるのは、名古屋の醸造品である八丁味噌。そこに白味噌や生醤油を合わせることで、まろやかさが加わり、コクにもさらなる深みが生まれ、山本屋総本家の味が完成する。今の味に辿り着くまでに、いろんな白味噌で試し研究を重ねたというが、八丁味噌はカクキューの一本というこだわりがある。

「八丁味噌は創業当時の名古屋で、手に入れやすい調味料だったのだと推測しています。その歴史が今まで続いているのは、八丁味噌が美味しいからでしょうね。山本屋総本家で使用する八丁味噌はカクキューさんの味噌です。出汁との相性がよく、味が一つにまとまりやすくなります。」

八丁味噌の歴史と共に、味噌の出汁を最後まで美味しく味わう方法も町田氏は教えてくれた。

「煮込うどんと一緒に、ぜひご飯も注文してください。味噌のお出汁をご飯にかけると、おじやの様に食べれて〆にもいいですよ。煮込うどんにたまごを入れる方は、味噌の出汁とたまごをご飯に乗せて食べると最高です。」

ご飯にかけて啜れる味噌の出汁と聞くと、辛すぎず、でも濃厚な味がする汁だろうとイメージが膨らむ。もしかすると、100年前の名古屋人も、同じような食べ方で八丁味噌の美味しさに浸っていたかもしれない。

「味噌煮込うどん」だけじゃない、こだわりの名古屋めし

金シャチ横丁店をはじめとする一部の店舗では、味噌煮込うどん以外にも、こだわりを見せる山本屋総本家を覗くことができる。

お取り寄せ商品として人気のある「みそおでん」は、味噌煮込うどんの出汁とは違う味噌が楽しめる。

「味噌おでんは、甘い味噌で煮込んだおでんのことを言います。これも、名古屋で昔から食べられている味ですね。おでんの具材には、『赤棒』という赤色の棒状はんぺんや、季節によっては朱色の『名古屋かまぼこ』が入ることもあり、名古屋らしい具材も楽しめます。おでん3品に必ずお出ししているゆで玉子は、味噌の出汁に潰してご飯の上にかけるとすごく美味しいので、試してみてください。」

名古屋の食材として外せない名古屋コーチンは、お酒を飲むお客さんからのリクエストに応えて、ウィンナーや薫製ササミといったおつまみメニューとして提供している。

サイドメニューに、みそおでん、名古屋コーチンと名古屋めしが並ぶ一方、メインメニューにはきしめんがある。

「先々代が乾麺の製造を始めましたが、きしめんも美味しいのでメニューに加えるようになりました。つるっとした喉越しが特徴で、飲むように食べていただけます。」

山本屋総本家といえば、煮込うどんのイメージが定着しているが、町田氏はきしめんも美味しいと太鼓判を押す。

初めて山本屋総本家を訪れるなら、やはり「味噌煮込うどん」を注文するだろう。だが、とことんこだわって味を追求する山本屋総本家だからこそ、他の名古屋めしも試してみたくなる。

「山本屋総本家」が見据える次の100年

町田氏にこれからの展望を尋ねると、返ってきた答えは創業当時の味を守るだけではなかった。

「日本各地から、煮込うどんを食べに名古屋に足を運んでもらえることを目指しています。あとは、お店に食べに来ていただきたいですが、自宅でも名古屋の味を楽しんで、名古屋にいるような気分になってほしいですね。」

と、日本全国に名古屋の味を広めたいという想いも窺えた。

その礎として、大手食品会社東洋水産が販売する味噌煮込うどんを監修し、名古屋めしを全国へ広めることにも寄与している。さらに自社商品では、お店の味を再現した「生みそ煮込うどん」を販売する。

「生みそ煮込うどんは、自宅でも作りやすいように、麺の配合はお店のものと少し変えています。ですが、お店と同じ味で提供できるように、研究を重ねた自信のある商品です。」

そばアレルギーの方でも楽しめるよう、そば粉を使用しない商品にするなど、山本屋総本家の企業努力とともに、名古屋の味を多くの人に食べてほしいという町田氏の想いが伝わる。

「『山本屋総本家はこんな商品も作るのか!』とお客様を驚かせるような新しい商品も開発していきたいと思っています。」

そう語る町田氏は、やりがいにあふれ、楽しそうにも見えた。名古屋めしを広めようと、舵を取る町田氏はスピードを緩めることを知らないようだ。

株式会社 山本屋総本家
取締役社長 町田 深幸
創業当時の味噌煮込うどんを守り続け、2025年に創業100周年を迎えた。飲食店事業では、名古屋市内に5店舗を構え、オンラインショップで販売する商品にも力を入れている。

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